気持ち揺らぐ「○○放題」

 食べ放題、詰め放題、乗り放題、掛け放題・・・。

人はこの『○○放題』の文字に惑わされます。居酒屋の前でよく見かける「飲み放題」の文字に目を奪われて、その条件に一喜一憂する。恥ずかしながら、ムムッ、なんだって！？と注視してしまうのは私だけでしょうか？

寂しいかな。新型コロナによる度重なる緊急事態宣言下では、店頭の幟がさみしく棚引いていいたのを記憶しています。お店は営業自粛を強制されても、消費者は欲望を満たしたいがために、飲酒の機会を創出しようとします。コンビニの前や駅の広場のドンチャン騒ぎは論外として、自宅での「家飲み」は閉店や帰宅時間の制約がない。ついついお酒の量が増えてしまった方も多かったのでは・・・。

酒類の卸業者は大量の生ビールの返品に悩まされていた。
生ビールとしての賞味期限が過ぎた場合でも、飲食品としての消費期限（＊）を守ることで飲むこと可能ならば、食品ロスを回避できるかもしれません。

ビールメーカーは会員に卓上ビールサーバーを無料で貸し出して、定期的に生ビールを届けるサービスを展開していました。
このサービスは飲食店から自宅に場所を変えた、飲み放題のイメージを思い浮かべてはいけませんよね。みなさんもご承知の通り、デジタルコンテンツのビジネスモデル、よくある「聴き放題」のサブスクリプシション（サブスク）ではありませんから。
メディア広告に於いて、飲酒に関して２０歳未満、妊娠中や授乳期の母親への注意喚起を怠っていないのは良しとしましょう。
けど、キッチン・ドリンカーのような「ダラダラ飲み」を生み出し兼ねないと思うのです。アルコールは依存性をがあるから、結局過度な飲酒が常態化してしまうことが危惧されるのです。

私は飲み放題と聞くとビールサーバーを思い浮かべてしまいます。
以前、愛媛県松山市で開催された医学会に参加したことがあります。松山城にほど近い温泉宿に宿泊しました。出張前に適当にネット予約した宿泊場所だったのですが、ここが大当たり。県外から大勢の参加者がいたにも拘わらず、予約客が少ない穴場で、道後温泉の引き湯に独り占めで浸かることができました。
さらに夕食がすごくよかった！
お刺身の盛り合わせは１皿だけだったのは苦々しい思いでしたが、小皿に分けられた３０品目のおかずが食べ（取り）放題。何よりも生ビールの主要３銘柄の飲み放題付きだったのです。

もうウキウキでしたね。お代わりはすべてセルフサービス。食堂を見渡すと、飲み屋でよく見かけるビールサーバーが３台鎮座している。制限時間（２時間）を無駄にしてはならじと、３歩歩けばサーバーに当たる座席を早々に確保して、夢のようなひとときを過ごしました。
コックを倒せばトクトクと・・・。これで料金は税込みで￥２，０００台だったのです。
夏目漱石も愛した温泉で疲れを癒し、３０品目の肴で生ビールを呷る。お財布へのダメージも軽減され、心もからだもポッカポカでした。「○○放題」を満喫した出張旅行でした。

こんなことを経験してしまった私にとって、ビールサーバーが自宅にあることは甘い罠と言わざるを得ない。
抑え難い飲酒への欲求が募って、そのうち身も心も蝕まれて、人との信頼関係も失われてしまう。そんな危険性をはらんだ「飲み放題」。

何はともあれ、自分自身が厳しく飲み過ぎを律することが肝要です。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（＊）農林水産省ホームページ