元気の源は "イイ匂い" から

ラーメン屋さんやパン屋さん、ハンバーガーショップに焼き鳥屋さん等々。飲食店の近くを通ると、イイ匂いが漂って来ますよね。思わず腹の虫が鳴いたりしませんか？けど、そのお店の近隣住民にとっては、しょっちゅう嗅いでいる匂いです。なので、嗅ぎたくもない時に嗅がされているのかも知れません。絶えず鼻に届く臭いに飽き飽きして、気持ち悪くなってしまうでしょう。鼻に付いてしまって、逆に食欲が失せてしまう。
とは言うものの、匂いは食欲増進に一役買っています。香辛料を使ったカレーの匂いはその典型ですよね。（刺激のある食べ物は健康寿命を延ばす！？） 
匂いを感じるタイミングによっては、おいしそうで食欲が湧いて来る。そして医食同源とばかりに１日の活気ある行動に導いてくれると思うのです。

物心が付いてから今に至るまで、一度だけ入院したことがあります。頭部のケガで病院のお世話になりました。脳震盪や斜視の症状もまったく癒えていなかった。気分も冴えずに散々な思いだった。入院して2日間はまったく食欲がありませんでした。配膳された食事もほとんど箸を付けず仕舞いだった。ところが３日目の朝、微かな料理の匂いが鼻に届いた瞬間、食欲のスイッチが入ったのです。入院した理由は内臓疾患でなく外傷だったので、食事制限が掛かった入院食ではありませんでした。ごく一般的な朝食のおかず、アジの開きを焼いた香ばしい匂いが漂って来たのです。今までの食欲不振が嘘のように、一気に平らげてしまった。すごくおいしかったのを憶えています。（ごはんが炊けるにおい）
それからというもの、しっかり歯を磨いて洗顔し、少しずつベッドを離れて歩くようになりました。体調回復を願い、前向きな気持ちがそうさせてくれたのだろうと思います。そんな感情を抱くことができたのは朝食のおかげ。今もそう信じています。

 似たような食にまつわる元気回復の場面に立ち合ったことがあります。実父が手術から目覚めた時のことです。こちらからの問い掛けに対して、目を閉じたままよく分からない返事だけを繰り返していた。そのうちに病床の簡易テーブルに朝食が用意された。伝統的な日本の朝食、ごはんと味噌汁の匂いがする。それに促されるかのように、スプーンで食事介助されながらも食べてくれたのです。それから程無く元気になって、ベッドに座って話し始めたのです。具合が悪くなってからの自分の心境を聞き取ることができました。食事する前まではうわごとを言っていたのに、嘘のように回復してくれたのです。

食事を摂ろうと後押ししてくれた料理の“匂い”に感謝しています。
１日の活力が湧き上がって来る、イイ匂いのする朝食は元気の源です。